2025年5月22日~25日に東京国際フォーラムで開催された第98回日本整形外科学会学術総会に参加いたしました。
研修医時代にも学会に参加した経験はありましたが、専攻医として臨んだ今回は、診療への関与が深まった分、各発表の内容をより具体的かつ実践的に捉えることができました。現地では各分野の専門家による発表や活発な議論が展開されており、整形外科の奥深さと今後の進歩への期待を改めて実感する機会となりました。
現在、脊椎班をローテート中であることから、脊椎関連のセッションを中心に聴講しました。特に脊髄損傷に関する講演では、二次損傷の早期評価に関して従来の臨床評価に加え、バイオマーカーや高解像度MRIを用いた画像解析技術の導入が提案されており、損傷の進行度をより正確に把握する手法が模索されています。
また、HAL(Hybrid Assistive Limb)を用いたリハビリテーションでは、脊髄損傷患者の下肢機能回復を目的とした研究が進められており、神経可塑性を促進する可能性が示唆されています。
これにより、従来は機能予後が不良とされていた症例においても、早期からのHAL介入によるADLの改善が期待されています。専攻医1年目として、こうした最新知見に触れることで、日々の診療の背景にある理論や思考を学ぶ貴重な機会となりました。
また、幅広い視点から整形外科全体を学ぶため、脊椎以外の分野の講演にも積極的に参加しました。印象に残ったのは、人工股関節全置換術(THA) 術後の動態解析とディープラーニングの応用に関する講演です。
THA術後の歩行や運動動作を三次元的に評価する技術や、AIによる骨形態・動作解析を活用したリスク予測が紹介され、特に術前CTと術後動作データを統合的に解析し、インピンジメントや可動域制限の可能性を事前に評価する技術は非常に興味深く感じました。術前計画支援ソフトの活用も進んでおり、今後の整形外科診療において情報工学との融合がますます重要になると実感しました。
今回の学会参加を通じて、日常臨床の背景にある最新の研究動向を把握することができ、大変有意義な経験となりました。今後も知識と技術の研鑽に努め、診療の質向上に繋げてまいりたいと考えております。
東京医科大学整形外科 今村翔一