こんにちは、スポーツ・関節鏡グループの関 健です。
2022年3月19日に奈良県で行われた、第8回 日本舞台医学研究会へ出席し、当院におけるバレエダンサーに対する股関節鏡視下手術について発表をしてきました。
皆さんは舞台医学(stage medicine)というジャンルをご存じでしょうか?
私が専門としているスポーツ医学では、サッカーやラグビーの様に相手と接触を伴う競技や、陸上や水泳などタイムを競う競技において発生しうる障害に対して、予防、手術、リハビリ等を行います。
一方、舞台医学は芸術活動に関連した動作障害に対する医学です。演劇、音楽、舞踏などの舞台芸術に関わる人々の高度な身体活動に対して、専門的見地から医学的管理を行うために、この研究会は立ち上がりました。
今回の演題としては、音楽家の手の障害、バレエダンサーやストリートダンサーの障害に関連することが多かったですが、舞台医学というジャンルは、その他にも民謡、歌舞伎、演劇など多岐にわたります。これらの芸術分野に対する医療は、医療者側がそれぞれの芸術活動についての知識や経験に乏しいことが多く、医療としての専門性自体が確立されているとも言い難いです。そのため、治療に対して患者様の満足度が伴ってこないことも多々あります。リハビリテーションなど多職種との連携も重要です。
今回の舞台医学研究会に参加し、日本の舞台医学は改めて発展途上であることを認識しました。新国立劇場の舞踏芸術監督である吉田 都様の講演を拝聴させていただきましたが、ロンドンのロイヤルバレエ団では、理学療法士、栄養士、カウンセラーなど、バレエダンサーに対するサポートが全てオペラハウス内で完結できるそうで、医師も直接オペラハウスへ出向いて診療を行っているとのことでした。日本ではバレエ団員に何らかの障害が発生した場合、多くのダンサーは自ら医療機関を探して、受診をしていることがほとんどかと思います。リハビリ、栄養指導、カウンセリングなど、その他の問題も個別の施設を訪れなければならず、ダンサー個人の負担も大きく、芸術監督の立場としても情報共有が難しいとのことでした。今後は、芸術活動に対する価値観や文化を育てることも必要と考えます。
2021年から東京医科大学病院と新国立劇場との間で協議が始まり、東京医科大学 整形外科 スポーツグループとして、練習や公演時に発生した障害に対する医学的介入を開始しました。私自身も、学問的に舞台医学を追及して いくことはもちろんですが、それだけにとどまらず、舞台芸術分野で活躍する皆様へのメディカルサポートをしていきたいと思います。