7月19日、20日と都内のシェーンバッハ・サボー(砂防会館)にて行われた第52回日本関節病学会にてCase Report Awardを受賞したのでご報告いたします。

この症例は、Ceramic-on-ceramic(CoC)THA術後にIL-17Aを介して発生したAdverse Local Tissue Reaction (ALTR)に対して再置換術を施行したcase reportでした。
CoC THAは耐摩耗性と生体適合性に優れ、骨溶解や偽腫瘍形成などのALTRの報告はもともと少ないインプラントです。近年の基礎研究で、ヒトの金属アレルギーのメカニズムにおいてIL-17A産生CD4+T細胞(Th17細胞)が病態発症に関与されていると言われ、Th17細胞の炎症生サイトカイン産生によるマクロファージ活性化&骨芽細胞にも作用しRANKLを介して破骨細胞の分化を促進することが判明してきております。自験例におけるALTRの発生機序ではneck-rim impingementが起こり、そのため金属イオン、ナノ粒子がインプラント周囲へ溶出し、その金属に対するアレルギー拒絶反応として、CD4+ Tリンパ球優位な浸潤を認め、IL17Aや他の炎症性サイトカインがインプラント周囲の骨や軟部組織に反応して、ALTRが発生したと推察されました。THA長期フォローにおける日常診療の中で骨溶解や偽腫瘍形成などの合併症は少なからず遭遇します、以前は原因として主にポリエチレン摩耗粉による異物反応が考えられていましたが、今回のようにポリエチレンフリーのインプラントにおいても金属アレルギーと考えられるIL-17Aの関与を示唆できたことに独創性と新規性があったかと考えます。今後も患者さんと真摯に向き合う中で“大事は小事より起こる”ことを肝に命じ、日々の診療の中で起こる小さな事象でも反応できるような免疫機構を備えていきたいと思います。

今回このような素晴らしい賞を受賞することができ、山本謙吾主任教授、関節グループの先生方、病理診断科の高橋礼典先生に深く感謝申し上げます。

石田常仁


会長の田中栄先生(東京大学整形外科 教授)と