首下がり症 dropped head syndrome
首があがらない、前をむけない、首がつっぱるなどの初発症状で発症し、首下がり症という名前を聞いたことがない方も多いと思います。
首下がり症は、首から背中をつなげる筋肉(頚胸椎移行部の伸筋群)の筋力低下によって発症します。
頚椎を支える後ろの筋肉と靭帯(項靭帯)の力が弱くなるため、後の骨と骨との間(棘突起間)が広がってしまって首がもちあがらなくなります。
首下がり症候群(DHS)の30%以上で中間位頸椎X線上首下がりを認めず、最大前屈時のChin on chestは、正常人でも可能な場合も多いため軽症例のDHS初期診断は難しく、首が下がりきった時に初めて本人も周りも首下がりとして気づくことが多いのが現状です。しかし、進行してしまうと、筋肉が線維に置き換わってしまい回復しなくなってしまいます。
そのため、早期に診断することが大切なため、首下がり患者様のデータをもとに、首下がりテストと自己診断問診票を作成しました。
首下がり症の診断と対策 | 東京医科大学 整形外科学分野 (tmuortho.net)
首下がりテストです。各姿勢で首を持ち上げられない場合は、首下がりを疑ってください。
首下がりの最初の治療は、リハビリと装具療法が中心となります。手術をしないで改善した患者さんの特徴について下記学会で発表していますが、
手術加療をせずに改善した首下がり症候群の特徴(J-GLOBAL ID:202202267420376657 整理番号:22A147226)上嶋智之ら
早期診断と早期治療がとても重要です。
https://jglobal.jst.go.jp/detail?JGLOBAL_ID=202202267420376657
当院では、2022年8月までで、170名の首下がり症患者の治療実績があり、専門のスタッフが外来リハビリを行います。
一般外来と別で、遠方から来院の方や、時間をとっての受診希望の方は下記にご連絡お願いします。
東京医大 予約外来:メディカーサ | 東京医科大学 整形外科学分野 (tmuortho.net)
体幹から頚胸椎の屈筋群のストレッチと、伸筋群の等尺性運動が基本となります。
下図のように、頚椎の後ろの筋肉をいかに引き下げるかがポイントです。
- 立位で前を見て(鏡を使用するか、相手の目を見て)トレーニングチューブを使用した弾性抵抗運動を行う。
これが、大切で、背中の筋肉に意識を持って、首をやや上げて前を見ながら行うことが大切です。
首下がりの原因となっている、姿勢維持筋のリハビリを等尺性運動を行います。
- 立位または座位で、天井注視体操
背中の上から天井をゆっくり見る動作をします。腰や眼球でみるのはダメです。
-
- 上を向いて、枕無しで足を伸ばして寝るストレッチ
首が浮いてしまう場合は、最初はタオルを入れて次第にタオルを薄くしていきます。
- ハンモックポジションで大胸筋をストレッチ
腕の付け根をのばして、巻き肩を矯正します。
- 腹臥位で前方注視の等尺性運動
背中を反らせて、前が見れるようにします。前が向けない場合は、片手で顎を持ち上げて、その状態を10秒間維持できるようにします。
- 四つ這いで、前方注視の等尺性運動
四つ這いでも、背中から首にかけて力を入れて前がみれるように力をいれます。前が向けない場合は、片手で顎を持ち上げて、その状態を10秒間維持できるようにします。
詳しくは、当院、リハビリ科で行われているリハビリの一部を紹介します。
全部ができるようになると、
*一般外来とは別に、遠方からくる方、時間をとって専門医の話を聞きたい方は、外来リハビリを希望の方は、予約外来(有料)があります。
下記を参照のうえ、電話でお問い合わせお願いします。メディカーサ、首下がり症外来
東京医大 メディカーサ(整形) | 東京医科大学 整形外科学分野 (tmuortho.com)
しかし、3から6か月リハビリをしても良くならない場合は、手術が選択枝となります。
手術は、伸びてしまった項靭帯を再構築する項靭帯再建術と、インプラントを使用して頸椎の弯曲自体を治す手術があります。項靭帯形成術は局所麻酔で靭帯を短縮する方法で侵襲は少ないのですが、最近開始されたばかりなので長期成績は不明な点があります。インプラント手術は、下記の手続きで行われます。
当院での頸椎手術の傾向は、頚椎変形を伴う高度技術手術が増加傾向です。安全で確実な手術を行うために術前にしっかりとした検査スクリーニングとスタッフ会議を行います。手術は、クリーンルームを使用して、脊髄モニタリング、Oアームによる最先端のナビゲーションを使用して、西村浩輔、村田寿馬、小西隆允、遠藤健司ら300例以上の豊富な脊椎手術経験のある術者によって行われます。術後は集中治療室が利用可能で、早期にリハビリを開始します。従来では手術を行うことが困難だった首下がり症候群のような重度変形の患者さんに手術が増えてきています。高齢の患者さんや重症の患者さんにも、手術が日常生活制限を改善する有用な方法となっています。