首下がり症 dropped head syndrome
首があがらない、前をむけない、ふらつく、首がつっぱるなどの初発症状で発症し、首下がり症という名前を聞いたことがない方も多いと思います。
首下がり症は、首から背中をつなげる筋肉(頚胸椎移行部の伸筋群)の筋力低下によって発症します。
頚椎を支える後ろの筋肉と靭帯(項靭帯)の力が弱くなるため、後の骨と骨との間(棘突起間)が広がってしまっています。
顎が胸についてしまう “chin on chest” という状態になってしまうため、前を見て歩くことがつらくなります。
一時頭を持ち上げることはできるのですがその状態を維持できない「姿勢維持困難症」で、近年、高齢化に伴い増加しております。
急に起こることもありますが、肩が凝っているような違和感から始まり、症状が軽いため最初はなかなか気づけないこともあります。
早期に診断治療すれば改善されますが、下がった状態(首の後ろがのびた状態)が長く続くと筋肉や靭帯がのびきってしまって改善が悪くなります。
首下がり状態は顔面傾きと垂線の角度をなすCBVA(chin brow vertical angle)という角度で評価します(下のレントゲンで、正常値は±10度以内)。
首下がり症のX線分類で初期では半数以上がレントゲンをとっても首がさがっていません。進行期は10度以上、末期は前を見ることができずchin on chestの状態となります。「首下がり」という病名はあまり知られておらず、早期診断が困難なため早期の治療開始が遅れることが多いです。首下がりの診断を早期にするために、問診票と首下がりテストを考案しました。心配な方は、自己診断をしてみてください。
他人から指摘されてはじめて気づくこともありますが、だんだんと頭部が重く感じるようになるため前にかがんだような状態になり、頭を無理に上げようとすると首や背中に重い感じの痛みを感じますが、横になると消失します。このような状態は、起き上がった状態での日常生活の質を著しく低下させます。前を向いて歩きにくくなったり、うがい、洗顔動作、歯磨き、ご飯を飲み込む(嚥下)などの生活基本動作や呼吸するのも苦しく感じる人もいます。
【プレジデントで首下がり症の紹介がされました】
https://president.jp/articles/-/69915?page=2
【毎日新聞で首下がり症の紹介がされました】
https://mainichi.jp/articles/20200318/ddm/013/040/010000c
立った姿勢は、首を持ち上げるために腰を使って体を後ろにさげようとするためお腹をつきだした状態となってきます。さらに歩くと頭をあげているのが困難となります。
原因のチェックが大切で、加齢による頚椎症や、加齢以外にも神経や筋肉の病気が原因で起こる場合があります。 主な疾病は、パーキンソン病・ジストニア(筋肉が緊張し続ける)・ミオパチー(筋肉の力が弱くなる病気の総称)などがあります。向精神薬の服用が影響することもあるので注意が必要です。
検査は、採血、骨密度、筋量を計測し、MRIや筋生検(筋肉の組織)、エコーを使用して筋肉の収縮状態を分析することで、診断します。
首(頭)が下がったままの状態を放置すると、筋肉が断裂して繊維組織に置き換わってしまい治癒が困難となってきます。そのため早期の診断と早期治療が大切です。
まず、首下がりの自己診断をしてみましょう。
まず、首下がりの自己診断をしてみましょう。
-首がさがっているか
□ 歩くとふらつく
□ 歩いくと前を向いていられない
□ うがいや食事、読書がつらい
□ 洗濯物を干すなど高い場所の仕事が不自由となる
□ 飲み込みがわるい。
-神経内科の病気から首下がりがくる可能性
□ 手が震える
□ 歩くのがこきざみになってきた
□ 歩くときに足があがらない
□ 腰がまがってきた
□ 物忘れが多くなる
□ 声がだしづらい
肩こりが首下がりのはじめの症状であることがあります。
最初は、単なる肩こりと思っていたら、少しずつ姿勢が悪くなって、人から首が下がっていると指摘されて気づく人も多いです。
身の回りのことはできるのですが、移動が不自由となり、仕事が遅くなります。
肩こり→首下がり→生活の不自由→移動が困難となります。
これらの対策は、原因について診断し、薬やマッサージでなく、早めに診断して正しいリハビリ運動をすることが大切です。
しかし、病気からくる首下がりもあります。項目4が3つ以上あたった場合は、脳や内科の病気からくることもあります。神経内科または整形外科のお医者さんに相談しましょう。
首下がり→体に病気があるかも(項目3)→医師に相談
【読売新聞で首下がり症の紹介がされました】
対策は、
①首が重くて歩いていて前が見ずらいと思った時、首下がりを疑い、早期に診断してリハビリを開始してもらうことです。
栄養不良で発生するためタンパク質などバランスの良い栄養をとること。サルコペニア(フレイル)、骨粗鬆症と多く合併します。
②首を支えている筋肉の多くは、肩と肩甲骨から発生しているので、首を動かすよりも、肩甲骨と背中を動かすことが大切です。また、腰から曲がっている人は骨盤から姿勢を正さないと首が安定化しません。つきでてしまったお腹を骨盤を使って引っ込める体操が重要です。
③首を支えた状態で維持する筋肉と首を持ち上げる筋肉は異なり、瞬間的に頭を持ち上げることはできるのですが、それを維持することが困難となります。特に歩く時、夕方にきつくなってきます。そのため、どの筋肉を鍛えればよいかを知るため専門家によるリハビリ指導をお勧めします。
例えば、多裂筋、頚半棘筋などは、深部にあって頚部の姿勢維持に作用し、頭板状筋、肩甲挙筋などは頚部を持ち上げる動作時に作用します。僧帽筋は頸椎、上腕骨、肩甲骨、脊椎の広い範囲に作用してそれらを引き寄せて肩や頚部の関節に力が入りやすい状態を維持させます。
立って上を向いたり、うつ伏せで前を見ることがとても困難となります。
姿勢維持筋をリハビリするには、うつ伏せ状態で背中や腕を使っで前を見る訓練が効果的です(詳しくはリハビリ訓練で指導されます)。
FAQ:首下がりは、治るのですか?
原因と発症からの時期によって異なります。パーキンソン病や、向精神薬の内服などが影響することがあるので、原因となる疾患がある場合は疾患の治療の進み具合に関係してきます。はっきりとした原因が無く、加齢でなっている場合では、真下を向いてしまう時間が長いと筋肉が伸びて組織が置き換わってしまうので回復が悪くなります。早期に原因、MRIやエコーで首を支えている筋肉の状態を診断して、装具とリハビリなどをすることが大切です。
FAQ:首下がりの原因はなんですか
はっきりとした原因は不明ですが、パーキンソン病など脳の病気、重症筋無力症など筋肉の病気、筋委縮性側索硬化症などの神経の病気、首への放射線治療の影響、抗がん剤の影響などさまざまな原因が報告されていますが、INEM(isolated neck extensor myopathy)と言われ、加齢現象による頚部を起こす筋肉(伸筋群)の筋力低下で発生する場合が増えています。原因によって治療が異なるのでまず、しっかりとした診断をすることが大切です。
FAQ:首下がりは、なぜおこりますか
首を支えている筋肉のうち、一番深いところにある姿勢維持筋(ローカル筋と呼ばれます)である頚半棘筋、多裂筋の筋委縮がおこり、それを頭頚部の動作筋(グローバル筋)である、頭板状筋、肩甲挙筋が代償して首をささえている状態となります。そして浅い部分の僧帽筋など頭、頚椎、肩甲骨を包括する筋肉全体にはった感じがひろがってゆきます。起き上がてっている時はchin on chest (顎が胸についた状態)となり、横になると顎と胸の距離が広がり、首の動き自体は比較的保たれています。首を支えている骨や関節、頚髄などの神経に障害が少ないのが頚椎症である頚椎後弯症は、首の動き自体が悪くなり、経過、予後、治療が異なります。しかし、首下がりが進行すると、頚椎症に移行してゆくことがあります。
FAQ:日常生活で何に気をつけたらよいですか。
首下がりの状態を長く続けないことが大切です。首の後ろの筋肉が伸びきって、腱も弛緩してしまうからです。下を向く作業を続けるときは、装具やポリネックなどをして、首下がりにならないように気を付けましょう。
FAQ:首下がりが悪くなるとどうなりますか。
首下がりの最初の症状は、首に違和感や痛みを感じてから1週間から3か月の間で発症し、初期の痛みは改善することが多いのですが、ふらつく、前を向いて歩けない、上を向きずらい、台所仕事で前かがみをしていると首が重くなる、うがいが不便などで、首の異常を自覚します。進行すると、自分で買い物に行けなくなるなど日常生活の不便が多くなり、上を向いて眠れなくなる、布団で眠ることができずリクライニングが必用となります。さらに進行して歩くときにいっさい前を見ることができなくなると、歩くのがこきざみになり不安定となります。外出することができなくなり、身の回りのことが徐々に自分でできなくなってきます。外出や衣類の片づけなど自分のことが自分で気なくなる前に、なるべく早期に治療を開始することが大切です。
FAQ:首下がりのMRIはどんな特徴がありますか
神経などの圧迫が少ないので、異常がないと診断されることが多いですが、よく観察すると、Katzが述べているように頚部伸筋群の変性(特に多裂筋や頚半棘筋の浮腫、萎縮)を認めたり、私どもの観察では、項靭帯の肥厚、弛緩、項靭帯のC7棘突起からの剥離などを認めます。ただし、これらの変化は、通常の加齢性変化でも観察されれることがある所見が多く、どこからが病的であるかを画像のみで診断することは現在のところ困難なので、経過をおって、画像変化を見ることで、異常所見を発見することができます。近年の研究では造影MRIが診断に有効であることがわかってきました。
治療の効果は、どのくらいサポートなしで前を向いて歩けるかで判定され、数歩で困難、数分で困難、10分程度は可能、30分以上可能、さらに改善すると首の愁訴を感じずに歩くことができるようになります。
重症度の分類を下記に示します(文献 Endo K., Sawaji Y, Aihara T., Suzuki H., Matsuoka Y, Nishimura H, Takamatsu T, Konish T. and Yamamoto K (2021).:Eight cases of sudden onset dropped head syndrome ⎼ Illustrative cases, JNS lessons. より和文として引用)。
上嶋の分類 | |
Grade 0 正常 | 30分以上連続して前を向いて歩くことが普通にできる |
1 軽症 | 30分以上連続して前を向いて歩くことができるが、首が重くなる |
2 中等度 | サポートなしで30分以上連続して前を向いて歩くことができない |
3 生活に支障あり | 数分以上サポートなしで、連続して前を向いて歩くことができない |
4 生活に大きな支障あり | 数分以上サポートなしで、連続して前を向いて立つことができない |
+N 医師に必ず相談の必要あり | 上肢の神経症状(麻痺やしびれ)を合併 |
Grade 2か3程度ですと経過が良いので、早めに相談してください。
治療は、お薬、装具、バンドなどありますが、運動、リハビリが大切です(下記図)。
首下がりテスト(どれかひとつでもできなければ首下がりの可能性があります)
首を支える力を評価する首下がりテストを考案しました(天井を見えるか、腹ばいで前を見れるか、四つん這いで前を見れるか)。
外来で初めて首下がりを訴えていらっしゃった方で可能であった割合です。リハビリでこれらの動作が少しずつ可能になってきます。
ただし、首のリハビリは注意が必要です。過去に血栓症や首の動きでめまいなどが発生した事のある方は、脳梗塞などのリスクが0.05%程度で発症することがあるので無理はなさらないでください。
※受診希望の方は↓のリンクを参照し、電話でお問い合わせお願いします。
https://hospinfo.tokyo-med.ac.jp/shinryo/seikei/index.html
*一般外来とは別に、遠方からくる方、時間をとって専門医の話を聞きたい方、外来でのリハビリ希望の方は、首下がり予約外来(有料)があります。
下記を参照のうえ、電話でお問い合わせお願いします。
東京医大 メディカーサ(整形) | 東京医科大学 整形外科学分野 (tmuortho.com)
【早期診断と治療が大切です】
それでも、生活の質が保てない場合は、手術を考慮します。
造影MRIで損傷部位を検査します。
自宅でできる、ネコちゃん体操 1日2回、無理のない範囲で猫背を矯正して首下がりを治しましょう
【首下がり、簡単体操(10分)】
最初は、座って体操
両手を腰にあてて、(腕の重みがなくなる)、首を前後左右に動かす
前を向いたまま、バンザイ運動をする(手を上げ下げする)
次に横になって体操
上をむいて、手足の伸びをする。その後、寝返りを左右2回ずつ行う。
仰向けで、枕を使用せず、背中に枕をあてて、両手を後頭部にあてて、手枕のようにして両肘をひろげます。
うつ伏せで、肘をつき、片手で顎あげて前をみれるようにして(頬杖をつくようにして)、ゆっくり頬杖を顎からはずして3秒から5秒前を見て維持する。
さらに詳細な体操は、下の次の段落で説明があります。
早期回復のための、集中的入院リハビリを希望の方は、関連病院である熱海所記念病院で2週間のシェアプログラムを行っています。
https://atami-tokoro.jp/guide/division/orthopedics-2/specialty/kubisagari/
治療経過を医学論文として発表しています。
【参考文献】
1)遠藤健司, 村田寿馬, 鈴木秀和, 西村浩輔, 田中英俊, 山本謙吾:首下がり症候群の病態と分類. 脊椎脊髄ジャーナル 28,936-941,2015
2)遠藤健司、田中英俊、宮本泰典、小島 理、西村浩輔、山本謙吾:首下がりの病態と治療. 関節外科、33,472-477,2014
3)Endo, K., Kudo, Y., Suzuki, H., Aihara, T., Matsuoka, Y., Murata, K., … & Ishikawa, K. . Overview of dropped head syndrome (Combined survey report of three facilities). Journal of Orthopaedic Science, 24(6), 1033-1036.,2019.
4)Murata K, Endo K, Suzuki H, Takamatsu T, Nishimura H, Matsuoka Y, Sawaji Y, Tanaka H, Yamamoto K.:Spinal Sagittal Alignment in Patients With Dropped Head Syndrome.Spine (Phila Pa 1976). 2018 Nov 1;43(21):E1267-E1273
5)Murata K., Endo K., Aihara T., Suzuki H., Matsuoka Y., Nishimura H.,Takamatsu T., Kusakabe T., Maekawa A., Uehara T., Yamamoto K:Relationship between cervical and global sagittal balance in patientswith dropped head syndrome, Eur Spine J 29, pages413–419 (2020)
6) Kusakabe T, Endo K, Sawaji Y, Suzuki H, Nishimura H, Matsuoka Y, Murata K, Takamatsu T, Maekawa A, Aihara T, Yamamoto K. Mode of dropped head syndrome and efficacy of conservative and efficacy of conservative treatment. J Orthop Surg (Hong Kong). Jan-Apr 2020;28(2):1-7. https://doi.org/10.1177/2309499020938882
7) Kudo Y, Toyone T, Endo K, Matsuoka Y, Okano I, Ishikawa K, Matsuoka A, Maruyama H, Yamamura R, Emori H, Tani S, Shirahata T, Hayakawa C, Hoshino Y, Ozawa T, Suzuki H, Aihara T, Murata K, Takamatsu T, Inagaki K. (2020). Impact of Spinopelvic sagittal alignment on the surgical outcomes of dropped head syndrome: a multi-center study. BMC Musculoskeletal Disorders, 21(1), 1-10.
8) Konishi, T., Endo, K., Aihara, T., Suzuki, H., Matsuoka, Y., Nishimura, H., … & Sawaji, Y. (2020). Global sagittal spinal alignment at cervical flexion in patients with dropped head syndrome. Journal of Orthopaedic Surgery, 28(3), 2309499020948266.
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10) Endo K., Sawaji Y, Aihara T., Suzuki H., Matsuoka Y, Nishimura H, Takamatsu T, Konish T. and Yamamoto K (2021).:Eight cases of sudden onset dropped head syndrome ⎼ Illustrative cases, JNS lessons. (DOI link: https://doi.org/10.3171/CASE211771)
11) Qian, W., Endo, K., Aihara, T., Sawaji, Y., Suzuki, H., Matsuoka, Y., … & Yamamoto, K. (2021). Cervical sagittal alignment in patients with dropped head syndrome. Journal of Orthopaedic Surgery, 29(1), 2309499021990112.
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13)Nishimura, H., Endo, K., Sawaji, Y., Suzuki, H., Aihara, T., Murata, K., … & Yamamoto, K. (2023). Global Sagittal Spinal Compensation for Dropped Head Alignment. Spine, 48(6), 421-427.
14)Endo, K., Nishimura, H., Sawaji, Y., Aihara, T., Suzuki, H., Konishi, T., … & Yamamoto, K. (2024). Contrast-enhanced Magnetic Resonance Imaging in Patients With Dropped Head Syndrome. Spine, 49(6), 385-389.
15)Sano H, Endo K, Sawaji Y, Aihara T, Suzuki H, Yamauchi T, Ishiyama M, Osada T, Ueno R, Masaoka T, Nishimura H, Yamamoto K. A novel diagnostic examination for dropped head syndrome (DHS) (Prone position cervical extension test; DHS test). J Orthop Sci. 2024 Sep;29(5):1179-1182. doi: 10.1016/j.jos.2023.09.003. Epub 2023 Oct 14. PMID: 37845161.
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運動器リハビリテーション 34 (3) 268-273, 2023.
19)Endo K, Nishimura H, Sawaji Y, Aihara T, Suzuki H, Konishi T, Nagayama K, Yamamoto K. Contrast-enhanced Magnetic Resonance Imaging in Patients With Dropped Head Syndrome. Spine (Phila Pa 1976). 2024 Mar 15;49(6):385-389. doi: 10.1097/BRS.0000000000004841. Epub 2023 Oct 4. PMID: 37791664.
20)Endo K, Kanai H, Sawaji Y, Aihara T, Suzuki H, Konishi T, Nishimura H, Yamamoto K. Nuchal Ligament Reconstruction Surgery for Dropped Head Syndrome: A Case Report. JBJS Case Connect. 2024 Oct 18;14(4):e23.00611. doi: 10.2106/JBJS.CC.23.00611. PMID: 39423291; PMCID: PMC11486988.
21)Ueshima T, Endo K, Nishimura H, Sawaji Y, Suzuki H, Aihara T, Murata K, Konishi T, Kusakabe T, Yamauchi H, Matsubayashi J, Yamamoto K. Magnetic resonance imaging findings in patients with dropped head syndrome. J Orthop Sci. 2024 May 4:S0949-2658(24)00062-9. doi: 10.1016/j.jos.2024.04.005. Epub ahead of print. PMID: 38705766.
【手術実績】
当院での頸椎手術の傾向は、頚椎変形を伴う高度技術手術が増加傾向です。
人工靭帯を使用して首をネジで固定することののない、高齢者にやさしい侵襲の少ない項靭帯形成術も行っています。
造影MRIで損傷された部位を特定し、そこに人工靭帯をあてがって補強する手術です。
手術後のリハビリが大切で、リハビリをすることで補強された靭帯につく筋肉が働いて首が持ち上がります。
首下がり症が進行して首が下がった状態で骨が固まってしてしまうと人工靭帯で持ち上げることができません、
その時は変形矯正術を行います。
安全で確実な手術を行うために術前にしっかりとした検査スクリーニングとスタッフ会議を行います。手術は、クリーンルームを使用して、脊髄モニタリング、Oアームによる最先端のナビゲーションを使用して、脊椎脊髄病学会指導医である、西村浩輔、遠藤健司、粟飯原孝人、松岡佑嗣、長山恭平、上原太郎ら豊富な脊椎手術経験のある術者によって行われます。術後は集中治療室が利用可能で、早期にリハビリを開始します。
従来では手術を行うことが困難だった首下がり症候群のような重度変形の患者さんに手術が増えてきています。高齢の患者さんや重症の患者さんにも、手術が日常生活制限を改善する有用な方法となっています。
執筆者:遠藤健司、西村浩輔