圧迫=痛みでないことは、同じ変形があっても痛い人とそうでない人がいることで、共感できる話です。

近年、痛みの発現にNGF(神経成長因子)が関与することが知られ、激しい疼痛に対してオピオイドより強力?な薬剤として抗NGF抗体が期待されています。

NGFは50年前に、後にノーベル賞をとるイタリア出身のレビー・モンタルチーニ先生(女性)がアメリカで、マウス肉腫片をニワトリ胚の体壁に移植すると、体壁から知覚神経、交感神経節が肥大することを発見し、その事実をワシントン大学生化学のコーエン先生に分析してもらってNGFが同定されたそうです。
神がかりてきな発見なようで、その後は類似物質の研究は飛躍的に進んだにもかかわらず、神経栄養因子としての2番目の脳由来神経栄養因子(BDNF)の発見は40年近くを要したとのことです。

NGF受容体には、高親和性のTrakA(トラックA)と低親和性のp75が存在しますが、p75は、TrakAと同時に発生することが多く、役割はTrakAの高親和性を保証するためと考えられているそうです。米国、NYのコーネル大学(私が昔、留学時代に医療ボランティアで働いていたところ)のハムステッド先生の研究室で、P75はNGF前駆体の高親和性受容体であり、NGF前駆体がP75を介して細胞を誘導するということが発見されています。NGF前駆体はTrakAと結合せず、NGF前駆体は、p75とTrakAを同時に発現する細胞に作用させると細胞死が誘導され、つまり、NGF前駆体と成熟型NGFは作用が正反対であることが見出されたそうです。

今後、これらの事実が、疼痛緩和治療に応用されることもありそうです。