近年の医療の進歩のひとつに、脊髄に圧迫や狭窄がないのに発生する四肢神経痛、脊椎外傷後、脊椎手術後の遺残性疼痛に対して行われる、脊髄電気刺激療法があります。心臓ペースメーカーの技術が脊髄に応用されました。

脊髄は、手足の痛みを脳に伝える働きがありますが、痛覚と触覚は別の伝導路を通じて脳に伝えています。電気刺激で脊髄内の触覚の経路(後索路)を賦活化すると、脊髄内の介在神経を通じて、GABAという抑制する伝達物質によって、痛覚伝導路がブロックされます。そのため、触った感覚が残っている方に良い適応があります。

方法は、トライアルと本植え込みの2回から構成されます。トライアルは電極を脊髄の硬膜外という脊髄の外に電極を入れて、体外式電池から電気を流します。約1週間電気を流して、効果のあった方に、本植え込みを行います。

トライアルと本植え込みは、局所麻酔と全身麻酔で行われることがありますが、電極がリード型の場合は、局所麻酔で可能ですが、パドル型といってシート型を使用する場合は手術となるので全身麻酔となります。電極の埋め込みには、1時間から脊椎変形、癒着などがあると2時間30分程度かかるので、当科(整形外科)では、全身麻酔で行うことが多くなってきています。MRI対応なので、電極が入っていても安心です。

合併症は、1~5%で、感染、血腫、神経損傷が報告されています。神経損傷は永続的な障害、麻痺、新たな痛みとなって発生するリスクがあるので、適応には注意が必要です。
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