スタンダール・シンドローム
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スタンダール・シンドローム(英: The Stendhal Syndrome)は、フランスの作家スタンダールが、1817年に初めてイタリアへ旅行した時にフィレンツェのサンタ・クローチェ聖堂の内部の17世紀のフレスコ画を見上げていた時に、突然眩暈と動揺に襲われしばらく呆然としてしまったということから、1989年、イタリアの心理学者グラツィエラ・マゲリーニが同様の症状を呈した外国人観光客の例を数多く挙げてこのように命名したもの。彼女によると、崇高な充実感と同時に強い圧迫感が見られたという。
東京医科大学の遠藤健司医師によると、美容院で髪を洗うため、首を長時間後ろに反らしていると、『血栓による卒中』を起こす可能性があるという。首の両脇を通り、小脳や脳幹、後頭葉などに血液を供給している椎骨動脈という血管があるが、この血管は、椎骨と非常に密接につながっている。そのため、首を後ろに強く反らすと血管が圧迫され、血流が一時的に少なくなる。すると、血小板の流れも滞るようになり、小さな血の塊、『血栓』ができる。再び首の位置を戻すと、せき止められていた血液が一気に勢いよく流れ出し、血管内にできた血栓も押し流される。そして血栓は脳内の細く枝分かれした血管の先まで運ばれ、そこで詰まってしまい、『卒中』を引き起こしてしまう可能性があるというのだ。この卒中の症状は、軽い場合は頭痛や吐き気、めまいなどを引き起こし、重い場合は手の先がしびれ、失神したりするという。ただし、後遺症として意識障害などが残るケースは少ない。
そして遠藤医師によると、なんと『スタンダール症候群』と美容院における卒中症状は、原因が同じ可能性があるという。そこで、『スタンダール症候群』が発生した場所について検証してみると、全ての場所で見上げるような高い位置に彫像や壁画が飾られており、それらの芸術作品を鑑賞するためには、長時間上を見上げていなければならないということが判明したのだ。 さらに、遠藤医師によれば、観光客のほとんどが上を見上げたりしているのに、全ての人に症状が起きないのは、血栓が出来やすくなる「条件」がいくつかあるためだという。例えば、大量に汗をかくなどして血液の成分がより濃くなっていたり、5分以上の長時間、首を反らしたままでいることで、血液の流れが極端に悪くなっている場合などである。つまりスタンダール症候群は『メディチ家の呪い』などではなく、首への圧迫で血栓が出来、卒中を引き起こしていた可能性が高いのである。しかし、マゲリーニ博士を中心とした研究チームでは、まだ明確な答えを出してはいない。
この首への圧迫で血栓ができ、卒中になるという症状は決して特別なことではなく、いつ、誰が同じような症状を引き起こしても不思議ではないという。例えば、以下の状況は、充分に注意が必要だという。① 天井の電球の取り替え作業・・・血栓による卒中を避けるには、ソケットまでギリギリ届くような足場ではなく、余裕を持って取り替えられるようにする② 草むしり・・・草むしりをする時は一ヵ所に止まって手を伸ばさずこまめに移動して、手元の草だけを取る③ 映画館・・・時々、首を元に戻し血の流れを改善するか、首に負担なく見られるスクリーンから離れた席で見るようにする。
また、美容院における卒中の対策として全日本美容業生活衛生同業組合連合会は、洗髪中、首の血管への圧迫を避け、左右に揺らさないようにし、洗髪後にいすを起こす時は、一声かけ、首に急激な負担をかけないよう、全国の美容院に呼びかけている。みなさんも、突然の悲劇に見舞われる事のないように十分ご注意頂きたい。ときどき首を動かしましょう。