text neck (テキストネック)―スマホ障害と頚部痛―

スマートフォンやタブレット、ゲームなどの携帯デバイスを長時間使用している頚部の状態を「text neck (テキストネック)」と呼ばれ、頚椎のアライメント不良と関連があることが報告されています1)。特に片手使用する場合、頚部痛の発生との関連が指摘されていますが2)、直接的な関連は不明な部分がまだ多い状態です3)4)。昔から長時間の頚椎前屈作業はいろいろとあったと思いますが、焦点距離を一定とした同じ姿勢で(不動化)連続して行われていることが特徴であると言えます。現代の人々は、こうした多くのデバイスを使用しながらの、メール作成や、文書を読む機会がふえており、そのような動作を近年textと呼ぶそうです。テキスト・ネックは、頭部の荷重分担を前方にシフトするため、頚椎、上位胸椎の椎間板、頚部伸筋群に大きな力学的負荷を与えるため、長時間、首を曲げた状態でのデバイスを使用は、頚部負荷が増加します。人間の頭部の重さは体重の約10%と言われていますが、頭の重さが5kgとすると、携帯デバイスを見るために頭をもたげると、首の自然なカーブがフラット(ストレートネック)または後弯となり、椎間板、頚部後方にかかる負荷はさらに増えます。時間が経つにつれて、背中の椎間板や神経、また伸筋群に負荷がかかることから、痛みを引き起こします。その結果、私たちが長時間、複数のデバイスを使って仕事をした場合、頚部にかかる負荷はとても大きなものとなります。このような原因で発生した肩こり、頚部痛は、痛みや不快感を発生するだけでなく、後頭部痛、めまい、眼痛、視力障害、顎関節症、胸部痛など自律神経症状だけでなく、重症化すると抑うつ状態となって日常生活の継続に支障をきたす可能性も存在します3)。ちょうど、軽微な外傷にも関わらず、長期間頚部痛を中心とした自律神経症状を患っているむち打ち損傷患者さんの状態と似ているとも言えます。

参考文献

1)Guan, Xiaofei, et al. “Photographic measurement of head and cervical posture when viewing mobile phone: a pilot study.” European Spine Journal 24.12 (2015): 2892-2898.

2)Xie, Yanfei, et al. “A comparison of muscle activity in using touchscreen smartphone among young people with and without chronic neck–shoulder pain.” Ergonomics 59.1 (2016): 61-72.

3)Damasceno, Gerson Moreira, et al. “Text neck and neck pain in 18–21-year-old young adults.” European Spine Journal 27.6 (2018): 1249-1254.

4)Vijayakumar, M., Sanika Mujumdar, and Aishwarya Dehadrai. “Assessment of Co-Morbid Factors Associated with Text-Neck Syndrome among Mobile Phone Users.” (2018).

5)遠藤健司、三原久典:本当は怖い肩こり、祥伝社新書

「肩こり」についてはこちらをご参照ください

 

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